2020年02月27日

住宅の断熱について役に立つ話

前回の建築物省エネ法説明会、後半は我々専門家向けの技術講習会でしたが、その中で住宅の断
熱について、いくつか一般の方にも役に立つ興味深い話がありましたのでご紹介します。
(図版は同 基本テキストより抜粋)

(1)住宅から逃げる熱量はバカにならない
東京都内の平均的な住宅で計算したところ、断熱性能の低い住宅(図の左側 昭和55年省エネ基
準相当以下)と高い住宅(右側 平成28年基準相当)では年間に逃げていく熱量が倍以上違うの
だそうです。これはそのまま冷暖房費にも反映され、別の計算(平成14年と平成28年の基準)で
も年間6万円以上の差になります。更に全く断熱されていない場合は年間10万円以上にもなり、
これを数十年続けるのは途方もない無駄遣いになると言えそうです。
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(2)断熱をしないと体感温度が大幅に低下する
人間が感じる体感温度は、気温そのものではなく、気温と周囲の表面温度との平均値になります。
従って断熱レベルの低い住宅は壁や床の表面温度が低いため、いくら暖房しても暖かく感じるこ
とはありませんし、適切に断熱すれば簡単に改善することができます。
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(3)断熱をしないと室内の上下で温度差が大きい(=不快に感じる)
古い木造住宅などではいくら暖房しても部屋の温度が上がらず、足元は寒いままということがよ
くあります。更に暖房の設定温度を上げても改善されず、次第に上方(=頭の付近)ばかり暑く
なって不快に感じるのではないでしょうか。
きちんと断熱化された住宅ならこうしたこともなく、上下の温度差は3℃くらいで済むため、快
適に過ごすことができます。
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(4)断熱をしないと部屋ごとの温度差が大きい(=ヒートショックの原因にもなる)
冬になると問題になるヒートショック。特に高齢者にとっては大きな問題で、毎年多くの方が命
を奪われています。(驚くことに年間の死亡者数は交通事故の2.4倍にもなるのだそうです。)
断熱化されていない住宅ではリビングなどの暖房している部屋とトイレや浴室などの暖房してい
ない部屋との温度差が大きくなり、ヒートショックの原因にもなっています。
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(5)窓の多い住宅の寒さ(夏の暑さ)を大幅に改善する方法
窓の断熱性が低いとコールドドラフトという現象が起こり、付近の床も冷気で温度が下がるため
その一帯はより寒さを感じてしまいます。このような場合、ガラスをLow-E(低放射)複層ガラ
スに交換するとその影響を大幅に改善することができます。
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(6)部屋が温まるまでの時間が4倍かかる
断熱化されていない住宅では、当然ですが、暖房しても熱がどんどん逃げて行きます。従って部屋
が温まる(=目標の温度に到達する)のに時間がかかり、とあるシミュレーションでは断熱化した
場合と比較して何と4倍の時間がかかることが分かっています。
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(7)結露防止
空気は温められるとより多くの水蒸気を含むようになります。逆に急に冷やされると空気中に含め
なくなった水蒸気が結露として発生します。断熱をしていない住宅では、このようにして暖房をし
ている部屋から出た水蒸気が暖房をしていない部屋で結露するという現象がよく見られます。特に
北側の窓付近を中心に多く発生し、カビの原因となるだけでなく構造体を腐朽させ劣化させる原因
にもなり、建物の寿命を縮めることにもなります。
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経済性、快適性、家族の健康、地球環境、省資源。メリットばかりの断熱化ですが、最後に気にな
る点と言えばコストだと思います。これについては国土交通省のシミュレーションがあり、省エネ
基準に適合させるコストは(1)新築の時なら約87万円(2)リフォームなら約231万円という
結果が報告されています。(約120m2の木造住宅、平成28年基準断熱等級4、地域区分6の場合。
比較対象は平成4年基準断熱等級3)
この金額だけを見れば決して安いものではありませんが、先に書いた通り、長い年月で考えれば節
約した光熱費で費用は回収できますし、何よりもその期間、毎日ずっと快適かつ健康に暮らすこと
ができるのです。実は私個人的には実家のリフォームにて効果を実感しており、何か他の費用を少
し節約してでも十分に行う価値があるというのが率直な感想です。

posted by shibata-arch at 21:00| Comment(0) | 実務